私の、小磯作品に対するイメージは、女学生が紺色のワンピースの制服姿で桜並木を通学路にして「ごきげんよう」と挨拶していたり、教室で詩を朗読していたりである。
多分このイメージ付けは、小磯画伯の代表作である。「斉唱」と言う作品の影響が大きいと思う。
10人程の白襟ワンピースの制服に身を包んだ少女たちが、これまた白い楽譜を手にして、各々別の方向を見つめながら合唱をしている作品である。
私は、この絵をテレビであったり雑誌等で目にすると
「この道は~いつか来た道~」と、歌っているのだろうかと思ったりする。
実際画伯は、この少女達は何を歌っているのですか?
そう質問されたが、それに対する回答はされていない。
どうやらこの絵を見た人の解釈にお任せらしい。
小磯氏がクリスチャンだった事もあって、賛美歌ではないかと言われた事もあったようだ。
この絵の彼女達の清楚さと無垢さ。
しかし、足元は裸足という哀れみや悲しみに、発表当時身につまされた人は多かったと聞く。
その背景にあったのは戦争だ。
斉唱以前の作品は、色彩豊かな女性の肖像が多かったのに対して、斉唱は華美さを排除した、黒いワンピースとそれと対比するような白い楽譜とワンピースの襟。
それが見事なバランスを保っている。
今、この作品は兵庫の美術館に展示されている。
いずれ本物を目にして、聞こえるはずの無い彼女達の歌声を聞いてみたいと思う。
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